「アジアのチームで戦うという選択肢を、もっと知ってほしい」
Standard新潟Vol.2(2019年2・3月号)にて登場した此村大毅(このむら・だいき)。タイのプロサッカーリーグに所属する「外国籍選手」だ。
世界各国のサッカー選手が新天地を求めて集まってくるタイ。現地選手も加えてのレギュラー争いは熾烈を極め、サッカーレベルは右肩上がりを続けている。結果が出せなければ間髪入れずに解雇も当たり前の世界。此村は、戦いの中で自分自身の価値を見出し、挑戦し続けている。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、2月に開幕したシーズンが4月末で終了。此村とチームとの契約も解消された。リーグは再編の後、9月に新リーグを開設する運びだが、連動して外国籍選手枠が減少。此村は、予想しなかった厳しい環境の中、それでもタイで戦うことを願う。今こそ自身のルーツを紐解き、サッカー人生の多様性を日本に向けて綴る。
(Standard新潟Web限定記事)
■新潟とタイの架け橋になりたい
はじめまして。新潟市出身、タイのプロサッカーリーグで7年間プレーしている此村大毅です。しばらくの間、主にタイのサッカー事情を日本の皆さんにお届けしていきます。
実は、以前から、私が身を置いているタイのサッカーを知ってもらいたいという気持ちは持っていました。しかし、一時帰国した時に垣間見た現実が、今回、「現地リポート」を記す大きなきっかけになりました。
その現実とは、タイという国について、そしてタイのサッカーについて日本の皆さんが抱いているイメージが事実とは異なる、というものです。これだけインターネットが普及しているにもかかわらず…。これは、7年間タイのサッカーの現場で生きてきた自分が伝えなければ、と思いました。
ぜひ日本の皆さんに、タイやタイのサッカーに興味を持ってほしい。そして、夢を持ち、将来有望な若者たちにいろいろな選択肢があることを知ってもらいたい、日本とタイ、新潟とタイを繋げられるような架け橋になりたいと思っています。
■喘息と空手とサッカーと
まずは自己紹介の代わりとして、少し長くなりますが、サッカーを始めたきっかけから、タイに渡る直前までの道のりをまとめておきたいと思います。
幼少期の私は、喘息持ちで身体が弱く、すぐに体調を崩す子どもでした。従兄弟が空手を習っていたため、私も5歳の時に空手を習い始めました。これが私のスポーツとの出会いです。小学6年まで続けたことで、喘息も克服でき身体も丈夫になりました。今日まで大きなけがもなくサッカーを続けてこれたのは、この頃の空手経験が理由だと思います。
サッカーボールを蹴って遊ぶようになったのは小学2年から。昼休みや放課後になると、上級生や友人たちとサッカーボールを追いかけていました。
サッカー部の試合を見に行ったある日、先生が特別に出場を許可してくれました。これをきっかけにサッカーがさらに面白くなり、小学3年で部活に入部しました。
ただ、両親は喘息を心配し、激しいスポーツには抵抗があったと思います。それでも、医師に相談して吸入器を使うことを条件に、サッカーを本格的に始めることになりました。
■弟がいたから今の自分がある
その当時はとにかくサッカーに夢中でした。チーム練習だけでは飽き足らず、小学4年ごろからは自主練にも精を出し、一つ下の弟と1対1で汗を流したり、休日は父に相手をしてもらって公園を駆け回ったり。
その弟のサッカーですが、彼は何をやっても簡単にこなしてしまいます。このあまりにも身近な弟の存在が、私のサッカー人生に大きな影響を与えました。単純な話ですが、「弟には絶対負けたくない」とか、「自分には才能がないから、上手くなるには人の倍以上努力しよう」などと、常に対抗心と向上心を焚き付けられる良きライバルだったわけです。サッカーに対する姿勢を学ぶきっかけを与えてくれました。
そのおかげで、小学5年ではチームのキャプテンを務めることができ、U-11新潟県大会ではチームメートと共に優勝まで上り詰めることもできました。
ところが、6年になると一転、キャプテンから外され、新潟の選抜チームにも入れず、全国少年サッカー大会でも敗れ…。とても悔しい半期を過ごしました。
当時、並行して空手も続けていましたから、両親に「中学生になったらサッカーか空手どちらを続けるか決めなさい」と言われ悩んでいた時期でもありました。
そんな私の気持ちを察してくれたのか、父が他のチームへの移籍を提案してくれました。練習に行けない日もありましたが、それでもチームの一員として受け入れてもらえたことで、忘れかけていた「仲間とプレーするサッカーの楽しさ」を再確認できました。当時のことを考えると、今でもチームへは感謝の思いでいっぱいです。
この頃、私は「プロサッカー選手になりたい」という夢を持ち始め、「もっと上手くなりたい」「もっとサッカーを知りたい」と考えるようになりました。(つづく)
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